熱帯魚の飼育をやさしく解説

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飼育に必要な器具類

熱帯魚の飼育方法にはとても多くのスタイルがありますが、ここでは初心者向けとして小型熱帯魚の飼育を前提とした一例をあげておきます。購入に際してはとりあえずひととおりのものが揃っている飼育セットが手軽で便利です。メーカーによって付属するオプション類が異なりますが、最低限必要なものさえ含まれていればどれを選んでもそれほどの差はないでしょう。

まず熱帯魚を飼育する上でどうしても不可欠なものは水槽と保温器具です。熱帯魚の中にはネオンテトラなどのようによく飛び出してしまうものもいますので、こうした種類を飼育したい場合にはピッタリとしたフタがついているものを選びましょう。そして次に水をきれいに保つためのフィルター(濾過器)ですが、これは飼育する熱帯魚の種類によって何を選ぶかが変わってきます。よく利用されるのが比較的静かで振動も少ないモーター式のものですが、これらは特に小型水槽では強い水流を発生させるため、小型魚や泳ぎの苦手な熱帯魚はぐるぐると流されてしまったり、時には吸い込まれてしまうこともあります。比較的水流に強い小型カラシンやオトシンクルスなどは割と大丈夫ですが、ベタやグラミーなどを飼うには不向きと言えましょう。

エアーポンプで空気を送るタイプの濾過器はモーター式に比べて穏やかなので、エアー量を調節できるタイプであればけっこう使えます。それでも強すぎる場合はフタマタと呼ばれる器具を使ってエアーチューブを分岐させ、空気を細かい泡にして送り出すエアーストーンに繋げて水流を分散させましょう。ただし音と震動がけっこうあるため、気になる人はまさに夜も眠れないという事態になってしまいますので、そのあたりは置き場所などに十分な配慮をする必要があります。

小型水槽であればフィルターを使わないタイプの飼育セットもあります。飼育できる種類や数は限られますが、音や振動がなく静かなので、こうしたことが気になる人には最適です。この手の飼育セットは熱帯魚、光、バクテリア、水草、エサの量などのバランスを取ることで水槽内に調和を造り出し、水をきれいに保つ仕組みを利用しています。この方式を取り入れた熱帯魚飼育セットは少ないため、メジャーな飼育方法ではありませんが、実は熱帯卵生メダカやワイルドベタなどのデリケートな種類を飼育する際の手法としては、かなり古くから世界中で行われてきた実績のある飼育方法であり、選択肢のひとつとしては安全で魅力的な候補のひとつと言えるでしょう。

管理方法

熱帯魚を飼育する場合は、まず水温に注意する必要があります。種類によって適温には差がありますが、たいていの種類は20度から30度の間で飼育することができます。エサは常に控えめに与えます。特に残りエサは急速に水質を悪化させ、熱帯魚の生命をおびやかしますので、見つけたらすぐに取り出します。

水替えですが、グッピーやプラティなどの新しい水を好む種類は週に3分の1程度、ベタなどのややこなれた水を好み水質の変化に弱い種類は週に5分の1程度を換えてあげると良いでしょう。水替えの量や頻度は水や熱帯魚の状態によって多少調節してあげます。水槽をセットしてすぐの頃は、エサを少し多めに与えただけで水が濁ることがありますが、そうした場合は水が澄むまでエサやりを中止します。このとき、観賞魚用の竹炭(なければ活性炭)を軽く水洗いして入れておくと、水質の改善に驚くほどの効果がありますので、ひとつでもストックしておくと、いざという時に安心です。

熱帯魚の種類について

【初心者におすすめの種類】

小型種
初めて熱帯魚を飼育される場合はやはり小型で丈夫な種類が適しています。イメージ的には大きな種類の方が丈夫そうに思えるかもしれませんが必ずしもそうとは限りませんし、小さい熱帯魚であれば小型水槽でも多少の余裕をもって飼育できます。温帯魚ながら流通上は熱帯魚として取引されているアカヒレなどは、あらゆる淡水魚の中でも特に強健な部類で、初めて観賞魚を飼育される方には特におすすめしたい種類です。初心者向きの丈夫な熱帯魚としてはベタやエンゼルフィッシュ、グッピーなどがよくあげられますが、アカヒレはこういった種類よりも更に丈夫です。他にもネオンテトラ、プラティ、ラスボラ(ヘテロモルファやヘンゲリ)、ドワーフグラミーなどが丈夫で美しく、トロピカルな雰囲気を満喫できますので、特に初心者の方におすすめしたい種類です。

ベタ
東南アジア原産の美しい熱帯魚です。コップのような小さな容器に入れられて一般によく見かけるベタはスプレンデンスという種類の改良品種で、通常はベタというとこの種を指します。ベタにはこの他、極端にデリケートということで特別扱いされるワイルドベタと呼ばれるスプレンデンス種以外のベタが存在します。確かに彼らは突然死や病気などに見舞われることも多いのですが、これはワイルドベタに限ったことではなく、程度の差こそあれスプレンデンス種にもよく見られる現象です。スプレンデンス種もワイルドベタも、この仲間は皮膚が弱いのか水温や水質の変化と、そして絶食に対してあまり抵抗力がない印象を受けます。ですからベタを飼育する場合は、なるべく水質と水温を変化させず、エサはたとえ少量でも規則的に与えてあげることを心がけてあげた方が良いでしょう。コップで飼える丈夫な熱帯魚の代名詞にもなっているスプレンデンス種も、水質が悪化すれば意外な程あっけなく命を落としてしまいます。ベタとの楽しい暮らしのためにもワイルドベタと同じように快適な環境を用意してあげたいものです。

【その他の人気のある熱帯魚】

カラシン
極めて種類の多いことで知られるグループです。それぞれの食べ物に適応した歯を持つほか、背びれと尾びれの間にアブラびれと呼ばれる小さな突起状のものがついているのが特徴です。数センチの種類から1メートルを越える種類まで様々で、食性も変化に富み、昆虫食や魚食の種類、水草や落ちてきた木の実を食べる種類の他、魚のウロコを専門に食べるものまでいます。極めて美しいネオンテトラ、そして、大型哺乳類をも襲うピラニアもこの仲間です。

ナマズ
カラシンに負けず劣らず種類の多いグループで、古くから人気のある仲間です。小さな目と大きな口がチャームポイント。大きさも数センチから、果ては淡水魚類中最大と言われるものまでいます。熱帯魚ショップにおいても成長すれば数メートルにもなるような超巨大ナマズの稚魚が普通に売られていたりしますが、まずは現実に立ち返り、冷静になってじっくりと熟考し、時には思いとどまるのも勇気です。

シクリッド
古くはカワスズメと呼ばれていた仲間で、エンゼルフィッシュやディスカスもこの仲間です。これらもまた大きなグループで、食性や容姿も同じ仲間とは思えないほどバリエーションに富んでいます。豪快で派手な中南米産のシクリッド、メタリックな輝きや海水魚を思わせるような鮮やかさを持つアフリカンシクリッドなど、それぞれのグループに根強いファンがいます。

コイ
小型から大型まで揃っていますが、特に小型のラスボラ類はじっくりと飼育して環境に馴染むと味わいのある美しさを見せてくれる魅力的な仲間です。ラスボラにはデリケートな種類も多いですが、ラスボラ・ヘテロモルファやラスボラ・ヘンゲリなどは丈夫で飼いやすく、しかもとびきりの美しさを楽しませてくれる素晴らしい熱帯魚です。

淡水フグ
ユーモラスな動きと愛嬌たっぷりの顔立ちが人気の仲間です。ひとくくりに淡水フグとは言っても種類によって淡水への適応の程度も様々で、中には海水で飼育した方が調子の良いミドリフグのような種類もいますので、それぞれに応じた飼育環境を用意してあげる必要があります。砂の中に潜んで通りがかる魚を襲って食べる攻撃的な性質のナイルフグや、小さくてとびきり可愛いアベニーパファーなど、容姿や生態も個性豊かな興味深いグループです。

ポリプテルス
代表的な古代魚として古くから親しまれている熱帯魚で、中でもポリプテルス・エンドリケリーはいかにも古代魚といったルックスで絶大な人気を誇っています。太古の世界を思い起こさせてくれる魅力的な熱帯魚ですが、比較的大きくなる種類が多い仲間なので、大きな水槽が用意できるかどうか良く考えてから飼育を始めましょう。

【飼育に慣れてきたら飼ってみたい小型熱帯魚たち】

小型アナバンティッド
リコリスグラミーやパラダイスフィッシュ、クテノポマの仲間などが含まれます。飼育についてはベタに準じます。この仲間はとにかく繁殖が興味深い仲間なので、飼育するからには繁殖を前提にした環境を用意してあげたいものです。リコリスグラミーやスパイクテールパラダイスの仲間は順調にいけば流木の下に入り込んで天井に泡巣を作り、稚魚を守る様子が観察できるかもしれません。あまり見かけませんが、中でもスパイクテールパラダイス(プセウドスフロメナス・カパーナス)は大変容易に繁殖しますので、初めてこの類の熱帯魚を飼育する場合には最適です。かなりの数の稚魚が生まれてきますのでエサとなるブラインシュリンプを大量に準備しておく必要があるでしょう。逆に殖えにくいと思うのはマルプルッタ・クレッセリィという種類です。近年は保護動物に指定されたようなので野生個体は輸入されないはずですが、とにかく産卵数が少なく、何度やっても一回の産卵で20匹そこそこの稚魚を得るのがやっとでした。

熱帯卵生メダカ
キプリノドン目のうち特に卵生のものをこう呼びます。近縁の種をざっとひとくくりにしてこう呼んでいるため、必ずしも日本のメダカと同じ仲間とは限りませんが、いずれにしても特異で美しい形状のヒレや極彩色をまとった種類も多く、実に興味深いグループです。乾期のある場所に生息する種類は干上がった土中で卵のまま雨期まで耐えるという能力を備え、またある種は40度もの温泉、しかも濃い塩分を含んだ特殊な環境の中で暮らしたりと、驚異的な生態を持つ種もいて、そのこともいっそうこの仲間に対する興味をかきたててくれます。熱帯卵生メダカは繁殖を前提として飼育されるために基本的にはペアで販売されているのが特徴です。古くから世界中で広く愛されているたいへん魅力的な熱帯魚ですが、専門のアクアショップでもないと扱えないような飼育繁殖の極めて困難な種類も数多く知られており、熱帯卵生メダカのファンは必然的に高度な飼育技術を探求し続けなくてはならないために、得てして素人の域を超越した驚くほど高い飼育技術を持っている人たちが多い世界になっています。

この他にも魅力的な熱帯魚たちはまだまだたくさんいます。大きくなる種類もいますので、きちんと最後まで面倒を見られるかどうかなど、あらかじめ下調べをしてから飼育にのぞみましょう。

こぼれ話

【学名について】
熱帯魚の中でも熱帯卵生メダカやワイルドベタ、シクリッドなどは学名で流通することの多い種類です。熱帯魚に限らず、新種として認められた全ての生物は学名を持っていて、それは属と種の組合わせで構成されています。例えば日本のメダカの学名は「Oryzias latipes(オリジアス ラティペス)」で、Oryzias属の中のlatipes種ということになるわけです。なお、「Oryzias sp」のように属名の後に「sp」とついていることがありますが、これは種を意味する「species」の略で、「Oryzias sp」の場合は「オリジアスの一種」を意味し、種を特定できない場合に用いられます。ちなみに英名(イングランドネーム)は海外において一般に広く使われている名称で、メダカの場合は「MEDAKA」の他に「Japanese rice fish(ジャパニーズライスフィッシュ)」などと呼ばれ、海外の水族館などで多くの人々に親しまれています。


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